お地蔵さんの日 令和6年度


第1回 お地蔵さんの日
令和6年4月24日
瑞岩寺(群馬県太田市)岡田律雄宗師


第2回 お地蔵さんの日
令和6年5月24日
泉龍院(群馬県桐生市) 大澤尊光宗師
 皆さんこんにちは。私は群馬県の桐生市にあります泉龍院の大澤でございます。
 今日のお話でございますけれど、皆さん、この「五観の偈」をお食事の時お供えしていただいているようでございます。1回復習をしていきたいと。もうすぐお昼になりますのでちょっと一緒に唱えてみたいと思います。
いいですか。では、読んでいきます。
・一つには功の多少を計り、彼の来処を量る。
・二つには己が徳行の全欠を忖って、供に応ず。
・三つには心を防ぎ、過を離るることは、貪等を宗とす。
・四つには正に良薬を事とするは、形枯を療ぜんがためなり。
・五つには成道のための故に、今この食を受く。

 これ1つ1つで簡単に説明していきますと、まず1番目には、いま皆さんが目の前の食事をいただくとします。さて、そのお食事はどこから来たんでしょうか。いろんな人が携わっていただくことによって、今、目の前にこういった食事があるんだということを感謝しましょうというのがこの1番です。
 2番目、この食事を食べて、 私は実はこの食事を食すに値するだけのことをしていますか、という、そういった気持ちを常に持っていきましょうっていうことでございます。
 次に3番目は、怒りやいろんな悪いこと、相手が傷ついてしまうような行為、 そういったことを「貪瞋痴(とんじんち)」と言っています。そういった心は持たないようにする。そのためには美味しい食事をいただいて、いつも体をきちっとした状態にしておくということなんです。心身を安定させるために食事をしてもらいたい。皆さん食事をする時は楽しくしてると思いますけど、その楽しくいただけてる、 美味しくいただけてるということは非常に大切でございます。それが、そういった貪瞋痴と呼ばれるいろんなと悪いことを防いでくれる役目をしてくれるということなんですね。
 4番目は、食事というのは薬を隠していると同じでありますよということです。皆さん、お薬とか飲んでらっしゃると思いますけども、それと同じでですね、食事というのも皆さんの健康を保つためのお薬、お肉を食べたりお野菜を食べたりお魚を食べたり、そういったものを色々と満遍なく取ることによって 体は常に健康に維持されているわけですね。ですから、このように感じて食事を食べるということも大切だっていうことです。
 で、5番目、最後にですね、 今この食事いただくということは、他の命をいただくからには、人間としてより素晴らしいことをしなきゃなりません、ということです。
 いろんなものに対する感謝の気持ちがものすごくいいです。皆さん、お食事しなかったら亡くなっちゃうわけですからね。そういった気持ちをいつも持ってですね、お食事する時には、ちょっと私のお伝えしたことを思い出していただけるとありがたいかなという風に思います。
 今日は「五観の偈」のお話させていただきました。またですね、もし私のお寺、桐生というところでございます。 ここからそんなに遠くないので、 もし機会ありましたらぜひお越しください。大変お疲れ様でございました。


第3回 お地蔵さんの日
令和6年6月24日
瑞岩寺(群馬県太田市)岡田律雄宗師


第4回 お地蔵さんの日
令和6年8月24日
瑞岩寺(群馬県太田市)岡田律雄宗師


第5回 お地蔵さんの日
令和6年9月24日
虚空蔵寺(新潟県柏崎市)竹田勝英宗師
 皆さんこんにちは、新潟県柏崎の虚空蔵寺の竹田です。
 普段は皆さんご存じの館林の源清寺におります。
 今日はちょうど時期なので、「お彼岸」のお話をいたします。

 お彼岸の初日を「彼岸入り」真ん中の日を「中日」最終日を「彼岸明け」と呼びます。
 今年は9/ 19日が彼岸入り、9/23日が中日、9/25日が彼岸明けとなります。
 日本におけるお彼岸は、主に「お墓参りやお供え物を通してご先祖様を供養する期間」と考えられています。
 では、「お彼岸」という言葉の意味や成り立ち、お彼岸とは何かを簡単にお話ししましょう。
 元々「彼岸」という言葉の意味はサンスクリット語の「パーラミタ」で、日本では音写語で「波羅蜜多」と表されました。「波羅蜜多」の漢訳は「至彼岸」で、彼岸に至るになることから「彼岸」は「悟りの世界(お浄土の世界)へと辿り着く」という意味になります。

 日本仏教では「此岸」と「彼岸」という概念があります。
 ・此岸 こちら岸 欲や煩悩にまみれた世界(この世)
 ・彼岸 向う岸  仏の住むお浄土の世界(悟りの世界、あの世)
 この此岸と彼岸の間に流れる川の事を「三途の川」と呼びます。

「お彼岸」という行事は、日本古来からある「日願」信仰と、仏教伝来後に生まれた「彼岸」という考えが結びついたことで生まれました。
 古来より農作が盛んであった日本では、作物を育てる太陽と私達を守ってくださる先祖神への感謝を基本とした太陽信仰が定着しており、この信仰は「日願」とも呼ばれていました。
仏教伝来後の日本では「お彼岸の時期に仏教修行を行うことで、悟りの境地である浄土の世界(彼岸)に至ることができる」という思想が生まれました。
 西方の遥か彼方に浄土の世界(彼岸)があるとする「西方浄土」の考えに基づき、太陽が真東から出て真西に沈むお彼岸の時期は、浄土への道しるべができる時とされていました。昼夜がほぼ同じ長さになることから1年の中でこの世とお浄土の距離が最も近くなり、思いが通じやすくなる時と考えられていました。
「日願」と「彼岸」の2つの思想が結びついたことで、最終的には「ご先祖様への供養を行いつつ、仏教修行をすることで自分自身を見つめ直す時期」というお彼岸行事が生まれたということです。

 仏教修行の一つに「六波羅蜜」というものがあります。「六波羅蜜」とは、出家していない人たち(在家)向けに説いた、悟りに至るための修行方法です。
そこでは6つの実践というものがあります。
 1.布施(ふせ)    施しをすること
 2.持戒(じかい)   規律を守ること
 3.忍辱(にんにく)  よく正しい心をもっこと
 4.精進(しようじん) 目的に向かってたゆまず努力すること
 5.禅定(ぜんじよう) 常に平静な心を持ち続けること
 6.智慧(ちえ)    智慧を磨き智慧を働かせること

 六波羅蜜は仏教修行の基本ともいわれています。仏教修行を営むのに最適な「お彼岸」にこそ皆さんで集中してみましよう、という修行の機会がお彼岸です。具体的に何をどうするかというと、
 1.お墓の掃除・お参り
 2.お仏壇のお参り・お供え
 3.親戚へのお参り・お供え
 4.お寺主催の彼岸会法要への参加
などになると思います。

 本日はお彼岸についてのお話をいたしました。少し専門的な言葉も出てきましたが、お彼岸というものの意味や成り立ちを少しでも知っていただけたなら幸いです。